時代を超えて愛され続ける家の作り方 〜和とモダンの黄金比を探る〜 後編

前回の記事では、和モダン建築を理解するための「和」と「モダン」それぞれが持つ、相反する性質をお伝えさせていただきました。

では、和モダン建築を作る上で最も大切なことはなんでしょうか?

最も大切なことは2つ

  • 「モダン要素」と「和要素」を配合する割合
  • 和建築そのものへの深い理解

この2つになります。

モダンと和の黄金比を探る

一般的に和モダンと聞くと、和風をベースにそこにモダンな要素を取り入れていくと考えられがちですが、住宅においてはその逆。

現代的なデザインをベースに和のエッセンスを少しずつ足しながら、絶妙な黄金比を探っていきます。

この緻密な作業が設計段階においてとても大切になります。

「和」をベースに設計しない理由は3つあります。

  • 理由1:洗練されたデザインを演出できない
  • 理由2:機能面やすごしさやすが損なわれる
  • 理由3:質素かつ簡素なデザインになりがち

「和風」をベースに設計をしない理由の一つ目は、和をベースに作ってしまうと、あくまで和が主体となってしまうため完全な和の建築物が出来上がってしまうからです。

そのまま昔の建物を再現するような形になってしまい、そこに新しさや洗練された雰囲気が生まれません。

また家自体の使いやすさや過ごしやすさなど機能面においても、昔よりも今の建築をベースに使った方がはるかに良いです。

和モダン建築の原点となった数寄屋造り

3つ目の理由、「質素かつ簡素なデザインになりがち」について少し解説したいと思います。

現在の和風建築は、千利休が打ち出した数寄屋造りという建築様式が原点となっています。

数寄屋造りが生まれるまでは、格式などを重んじた豪華絢爛な装飾が施された建築が良しとされてきました。

ですが、安土桃山時代に生まれたこの数寄屋造りは、それまでとは打って変わって、格式を重んじる豪華絢爛など装飾を排除し、無駄のないシンプルで洗練された佇まいを目指したのです。

四季折々の風情や情緒を感じることのできるこの数寄屋造りは、時代の変化とともに徐々に主流となり、それ以降の和風建築を支える土台となったのです。

そして、この数寄屋造りこそが現在の和モダン建築の基礎となっているのです。

このような背景があり、和建築は洋風デザインに比べて質素に簡素に作られる場合があり、そのままとりいれてしまうと、すこし物足りなさを感じることがあります。

もちろんワビやサビを意図的に取り入れて、そのような造りになっているのですが、住宅においては、ラグジュアリーな雰囲気や西洋の洗練されたデザインを積極的に取り入れていくことで華やかな雰囲気を生み出すことができるのです。

だからこそ、「モダンデザイン」をベースに、そこに洗練された和のエッセンスを加えていきながら、その家にあったベストな塩梅を見つけることが大切になります。

その結果、時代をこえて愛され続けるデザインが完成するのです。

和様式のルールをどれだけ理解しているかが勝負

和の要素を取り入れる際に大切になることは、設計士がどれだけ和建築のルールを深く理解しているかです。

空間を美しく仕上げるため、室町や江戸時代には、その時代ならではの空間設計のルールがありました。   

室町時代にできた書院造という建築様式への理解、千利休が打ち出した数寄屋造りへの理解など、和のルール一つ一つを理解して自分のものにできているか。

あらゆる和建築への理解が求められます。

「なんとなく和風な家に近づけよう」と表面的に和っぽいデザインをなぞってしまうと、安っぽいデザインになってしまいます。

もちろん知識だけではなく、実際に歴史的建造物などに自分の目でみて触れ、肌感覚を日頃から養っておくことも大切な要素となります。

たとえば、このキッチンをご覧ください。

このキッチンのデザイン、和室によく使われているデザインをモチーフにしています。

どこかで見たことありませんか?

実は、格子戸の幾何学的なデザインをキッチンに採用しています。

格子戸には、様々な種類があり、木の組み方や形があり、その分だけルールが存在しています。

その中から、この空間にマッチする格子戸デザインを採用し設計をしています。

破っていいルールと、破っていけないルールがある

また和式のルールをしっかりと理解していないと、知らず知らずのうちにタブーな和風デザインを作ってしまうことにもなります。

たとえば床の間ですが、床の間にももちろんルールが存在しています。

床の間の天井を支える『竿縁』という部材があるのですが、この部材は床の間に対して、並行になるように取り付ける必要があるのです。

以下の写真の赤ラインに注目してみてください。『竿縁』が正面にある床の間に対して平行になっているのがわかります。

これは床の畳部分にも同じことが言えます。

床の間に一番近い畳のラインが床の間と平行になるように設計する必要があります。

これが床の間をデザインする際の基本的なルールになります。

もし、このルールを知らずに、天井と床のラインを横ではなく縦にしてしまうと、それは床の間ではなく「床刺し」と呼ばれる空間になってしまい、とても縁起の悪い空間となってしまうのです。

正面にある床の間に対して、竿縁が刺さっているように見えることから「床刺し」と呼ばれるようになり、武家屋敷では「刺されてしまう」ことを連想させる縁起の悪い空間とされました。ゆえにこのような空間を作ることはタブーとされてきたのです。

それとても縁起が悪く、このような家に住み続けるのはかなり気が重くなりますよね。

このようにいくつも和建築のルールに精通していないと、完璧な和モダン建築を作るのは難しいのです。

「なんとなく良さそうだから」という感覚値だけで和の要素を入れていくのではなく、ルールを理解した上で、意図的に和の要素を足していくことが大切になるのです。

まとめ

いかがでしょうか。

今回は、「和モダン建築」について掘り下げた記事を書いてみました。

少しでも理解の助けになれたようでしたら嬉しい限りです。

ここでお伝えしたことは、私たちが和モダン建築を建てる上で日頃から大切にしている哲学でもあります。

和建築のルールや文化を徹底的に理解した上で、和の要素とモダンの要素を掛け合わせながら、その黄金比を見つけ出すことは、和モダン建築を作る上で必須です。

さらに、この黄金比に正解はありません。

その土地や風土、その時代に合わせて、その黄金比は常に変動します。

もし、和モダン建築についてご興味が有られるようでしたら、些細なことでも結構ですので、

一度ご相談ください。

ぜひご連絡をお待ちしております。

→時代を超えて愛され続ける家の作り方 前編 〜和モダン建築とは〜

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